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フォンクのト短調


モーツァルト:交響曲第40番ト短調KV550
ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調作品92※

ハンス・フォンク指揮 セントルイス交響楽団

CD・ステレオ・録音:1998年9月24~25日、※1999年1月8~10日、パウエル・シンフォニーホール、アメリカ合衆国
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フォンクのト短調

モーツァルトの交響曲第40番、知らない人のいない定番中の定番曲。しかし、この曲をきちんと演奏することは至難の業と思われます。

ブラームス交響曲第4番の演奏でも思ったのですが、フォンクの音楽には内面の深い慟哭が感じられました。

モーツァルト…救いようも無い慟哭、疾走する悲しみ…

フォンクのト短調となれば、いやが上にも期待は高まります。

リリー・クラウスは「モーツァルトは、どんなに感情が高まっても表面が僅かに波立つだけです。」と述べていますが、このフォンクの演奏を聴くと、殊更、その言葉の重みが伝わってきます。

上辺の旋律線ばかりに気を取られず、フォンクの目は常に楽曲の内部にも向けられています。何気ない低弦の音型にも、音楽の構成要素としての重要な意味があることを知らしめるのです。

土台から丹念に仕上げられた滑らかな微粒子感。聴けば聴くほどに味のあるト短調。

きりっと引き締まって優美にして純潔な弦の響き、アインザッツ一つ取っても、その響きは時に峻厳ですらあります。律せられた響き、真に音楽が一音一音大切に奏されていくこと、それ自体に胸に迫るものがあるのです。一音をも蔑ろにしない音楽に対する誠実・真摯な姿勢には、本当に頭が下がる思いです。

デュナーミクのコントロールは繊細を極め、微妙なアゴーギクが見事にモノを言っています。

楽曲の構造・構成・テンポを熟慮し、各楽器・パートについて旋律の歌わせ方の細部に至るまで神経を通わせていて、その音楽の充実度・集中度は素晴らしいの一語。

やはり、この響きはアメリカのオケとは思えないですね。寧ろ東欧のオケに近いものを感じます。

決して重い響きは出さず、様式美を湛えたモーツァルト。その様式美の中に、涙に濡れた悲痛や孤独が告白さながらに歌われていくのです。

フォンクのト短調…聴き終えたその時、誰しもの心に深い感銘を残すことでしょう。



カップリングのベートーヴェン交響曲第7番も、フォンクらしい丁寧な響き作りで、迫力よりは味で聴かせるタイプですが、それは見事なものです。

モーツァルトは、ところどころ、僅かにフォンクの唸り声と思しき音も入っています。彼の感情移入のあり方を知る上でも貴重かもしれません。(^^ゞ

このCDは録音も普通に良いので、ご心配ないかと存じます。(^^ゞ

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コメント

No title

フォンクのト短調来ましたか。
フォンク・エディションの続きをまだ購入できていないのです。というより、最近CDを購入する暇も無くて・・・。
Kapellさんがここまでオススメするのであれば、買わねばならぬですね。

No title

dokuohさん、お仕事大変なのですね。どうかご自愛下さい。

目下、こちらはツェンダーにもフォンクにも嵌っております。♪
カイルベルトのト短調も素晴らしいですが、このフォンクも素晴らしいです!同曲は、ワルター、シューリヒト、ヴェーグ、カザルス、クーベリック、等々数多く聴いて参りました。

No title

Kapell様
初めまして。私も、フォンクの指揮を好んでおります。特にドレスデン・シュターツ・カペレを振った録音は素晴らしいと思います。このCDは存じませんでした。ありがとうございます。

No title

リラ1890様、初めまして。
ドレスデンとの録音も、これから聴こうと楽しみにしております。♪
このCDは、つい先月末に発売になったものです。音楽だけを感じさせるフォンクの指揮振りは、本当に一生聴ける宝だと思います。
彼は、ドレスデンの響きをアメリカのオケから出そうとしたのでしょう。

No title

フォンクのト短調(モーツァルト)の演奏ですね。モーツァルトに秘められた心の分析といい、このCD録音へのフォンクのアプローチといい、かなり詳しく記載されていて読み応えのある記事でした。第40番はついメロディーだけを聞き流してしまいがちですが、深く耳をすまして聞くべき音楽なんですね。

No title

JUNOZAさん、ご覧頂いて有難うございます。
モーツァルトは、この美しい旋律・佇まいの中に、よくぞこれだけの想いを封じ込めたものだと更めて驚嘆致します。 それを具現して聴かせてくれる、類稀な名演がこのフォンクのト短調だと思います。

No title

モーツァルトのト短調というと、私の場合は弦楽五重奏ですが、もちろん40番も好きな曲です♪

私はクラなしの初版のほうが好きなのですが、この演奏はどちらでしょう?

No title

あまでおさん、これはクラありの方です。
クラはモーツァルトも好んだ楽器らしいですね。40番では音色が立体的に展開する辺り、改訂版にもそれなりの良さがある様に感じます。
この演奏、本当に心に響きます!♪

No title

もちろん、クラありは嫌いなんてことはないですよ♪

どちらかというと、40番にはこぢんまりとした中に秘めたるエネルギーみたいのを求めてしまうので初版のイメージがあるのですが、おっしゃるように改訂版のほうが空間的には豊かなひろがりが感じられますよね♪

いずれにしてもこれも注文させていただきましたので、到着が楽しみです(^^)
40番マニアのshozoさんはお持ちかな?

No title

あまでおさん、なるほどです。♪
期待を裏切らない演奏だと思います。お聴きになった感想を頂ければ幸いです。shozoさんが40番マニアとは知りませんでした。(^^

No title

昨日、CDが到着しました♪

時間がなくて第1楽章しか聴けませんでしたが、今日は全曲聴いてみます。ベト7も(^^)

No title

あまでおさん、畏れ入ります。
もしかして、いつもこの時間帯にアクセス頂いているのは、あまでおさんでしょうか?(^^♪
全曲のご感想を伺えましたら幸いです。

No title

確かに私は早起きなもので..。私のこともあるかもしないです(^^)

とても端正な演奏で緊張感もあり、素敵な演奏でした♪
第4楽章終了後のフライイング気味の歓声がちょっと惜しかったですが、生演奏でこれだけの完成度を示しているのは凄いと思います。個人的な好みからいうと、第1楽章の弦の刻み(例のヴィオラのdiv.など)がちょっと硬質な感じがやや気になりましたが、むしろ
こういうほうがいいと言う人が多いかもしれません。

間違いなく40番の名演に加えるべきでしょうね!

No title

あまでおさん、的確な演奏評を頂きまして有難うございます。m(__)m
また、お気に召した様で何よりです。♪
フォンクのCDは、その後も幾つか購入しましたので、今後、記事にしたいと思っております。

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