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ホロヴィッツのピアノについて


ホロヴィッツの演奏には「恐るべき緊張」があると言われます。「デフォルメ(歪曲)の大家」と揶揄する向きもありますが・・・。

彼はどんな作曲家の作品であれ、徹底して自己の解釈を加え、その作品を自己に同化させてしまいます。作曲もこなす彼は、作曲家の眼でも作品を見ることが出来ます。そして恰も自分の作品であるかのように、それらの作品を自己の内部に包摂するのです。

ホロヴィッツによって再現された芸術は、例えばスカルラッティは宝石を散りばめたような小宇宙を形成し、ショパンは光と影が織り成すロマンティシズムの極みを聴かせます。
リストは激しく壮大な主題表現の中に高貴ささえ漂わせ、シューマンは分裂質の夢と現実の移ろいに憂いを滴らせています。

彼の演奏が単なる主観的なデフォルメであれば独り良がりに終わり、このように多様な美感を生み出すことは到底出来ません。これはホロヴィッツが、実は非常に客観的な演奏家でもあることの何よりの証左と言えます。

いずれの演奏も極めて高いテンションの中で、作曲家の心象世界があまりにダイレクトに表出されるが故に、最早その音楽がピアノから発せられたものであることすら、聴き手は忘れ去ってしまうのです。

あり得ないことが、現実に起きてしまう衝撃たるや・・・!

ホロヴィッツは音楽の再創造=再現芸術の現場で、その瞬間、瞬間に音楽とギリギリのところで対峙している様に感じます。鋭敏な感性が、今、生まれたかのように音楽を再創造していきます。

ホロヴィッツのピアニズムは、指先の技術だけではありません。ペダルに注目して下さい。例えば、ON TVでのショパン・バラード1番、第1主題の再現部から終結部に入る直前の決然たる想いを、彼は絶妙にペダルを操り余韻を断ち切って表現しているのです。これは他のピアニストからは決して聞くことが出来ない類のものです。ショパン・アルバムでのエチュードOp.10-12にしても、実に鮮やかなペダルの妙技が現れます。

彼はピアノにオーケストラの表現力を求めており、事実、その離れ技をやってのけてしまいます。彼はピアノの指揮者であると同時に楽団員です。自らによってコントロールされた自分がそこに居るのです。

ホロヴィッツの魔力の世界、即ち恐るべき緊張の中で、セルフ・コントロールされた繊細且つ大胆な感情が音化されていく、その場に居合わせること自体が新鮮で貴重な感動体験なのです。

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コメント

No title

このシューマンいいですよねぇ。確か子供の情景とクライスレリアーナですよね。子供の情景とクライスレリアーナ、ホロヴィッツとアルゲリッチの2枚のみの所有なんですが、ホロヴィッツのクライスレリアーナがあったら十分ですよね。表情が豊か過ぎます。ショパンのお話が興味深かったので、改めて聴きなおしてみます♪

No title

ホロビッツさんのショパンの夜想曲(正式な曲名は存じませんが)が大好きです、寒い冬の夜に聞くと涙モンですネ。おっしゃる通りホロビッツだからこそ表現できる世界観と思います(^^)

No title

Jinさん、よくご存知で・・・あと小品が少々です。確かに一曲気に入ると異演盤を物色するのですが、未だにホロヴィッツ翁が浮気を!?許してくれません(^^)v。一方、ショパンも奥が深いです。

No title

キンコンさん、ホロヴィッツは、いきなり来ますね!本当に、グッと来る。JBLの一種の硬質さは、ホロヴィッツに通じるものがあるかもしれません。

No title

このディスク、秋葉原に行ったときに買い損ないました。シューマンは聴きやすくて好きです。

No title

cwdnf332さん、秋葉で見掛けたら即買わないと、次に行ったらなくなってたという経験が結構あります・・・(^_^;)。ホロヴィッツのシューマンは聴きやすいというか・・・思わず真剣に聴かされてしまうシューマンです。是非、聴いてみて下さい!

No title

はい、絶対買います!

No title

映画シャインで始めてホロヴィッツの名前をミミにしました!私も勝ってみようかなぁ

No title

ぴ~こさん、詩の世界と同じですよ。「買って」「勝って」下さい!(ぴ~こさん、態と間違えましたね・・・m(__)m)

No title

キャハハハハwww間違っちゃった(恥)

No title

お気に入りに登録させていただきました。私もこの録音は大好きで、ノックアウトされました。ホロヴィッツはつねに極限状態で、命がけで曲に挑んでいますよね。

No title

arzt7さん、有難うございます。ホロヴィッツの恐るべき緊張=極限状態・・・本人は自らを「極端な上がり屋」だと言っていたそうですね。しかし、普通のピアニストからは聴けない集中度だと思います。

No title

やはりホロヴィッツは壮絶なピアニズムを堪能させてくれますね。無論技術はこのCBS盤が最良ですが、わたくしなどは、晩年のDG盤ですら、魅力を感じます。二度目の来日公演のときは本当に良かったですからね。 最初のRCA時代やCBS録音はすLPの頃からすべて持っていますが、 CBSのショパンのスケルツォの1番なんか、真似手のない芸です。ただ、CBS系の録音はどうも音色がこもり気味で、惜しい気がします。マスタリングで、もう少し何とかならないものでしょうか。

No title

ホロヴィッツは壮絶な部分と繊細な部分が同居していますね。繊細さと言えば・・・例えばCBS録音のショパン・マズルカ作品59-3等は正にかくあるべしといった演奏で、ショパンの心象世界にワープしてしまいます。実に孤高なまでの美感に溢れていて、もし、ショパンが生きていてこの演奏を聴いたなら「私より上手い!」と言いそうな感じです。晩年のモーツァルト・ソナタK.333等の演奏も素晴らしい!CBS系の音は確かにイマイチですね。

No title

ホロヴィッツはいい印象がないので、これは期待しますね。

No title

jbls9500さん、是非、聴いてみて下さい。
このシューマン、きっと衝撃を受けると思います。録音は、少々癖があるのでイマイチですが・・・

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